粉雪2-sleeping beauty-
『…ごめっ…なさ…!』


瞬間、堰を切ったように、佐和は声を上げた。



『…アンタ…何か知ってんのか?!』


嵐は問い詰めるように、佐和に向き直った。


声を震わせながら、佐和は俯く。



『…あたしはただ…幸成が心配だった…。
愛してるから…。』



もぉ、メチャクチャ過ぎて、何が何だかわからない。


利用しただけだったのに…。


この女は、千里の身代わりだっただけなのに…。


結局、全部俺が壊したんだ…。



「…何で…知ってんだよ…?
何で俺の…邪魔するんだよ?!」


搾り出すように、佐和を責め立てた。



『…麻耶と磯村くんが同棲始めたって聞いて…。
遊びに行ったの…。
そしたら…幸成が事故にあったって電話があって…。
…あたし…気付いたら…!』


そこまで言い、佐和は言葉を詰まらせた。



真鍋が…磯村に電話した時…?


この女も…居たのか…。



今思えば、まるで導かれたように、

全ての歯車はこうなるように回っていたのかもしれない。


俺と千里は、絶対に交わることのない運命で。



『…千里が電話してきて…。
“嫌な予感がするから、マツを止めて!”って…。
“あたしはきっと、マツに何も言えないから…。
だから嵐が、あたし達を止めて”って…。』


「―――ッ!」


『全然意味わかんねぇだろ?!
来てみたら、お前は知らねぇ女殴ろうとしてるし、肝心の千里は居ねぇし。
どーなってんだよ!』



どーなってるのかなんて、俺にだってわからない…。


千里は気付いてたのか…?



“あたし達を止めて”


どういう意味なんだろう…。


俺達は、どこに向かってるんだろう…。


何も分からない…。


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