粉雪2-sleeping beauty-
『…今会いに行けば―――』


「俺、行かねぇから。」


嵐の言葉を遮り、搾り出すように続けた。


「俺はもぉ二度と、アイツと会わない。
…アイツの前から…完璧に消えるわ。」


『―――ッ!』


吐き出す煙は、部屋を漂う。



俺が消えることが、アイツの為になるんなら。


そんなこと、今更気付いたことじゃない。


ずっと前から、わかってたんだ…。


あの時、俺の腕は確かに振り払われたんだ。



「…嵐…。
アイツのこと…千里のこと、頼んだからな。」


『―――ッ!』



俺じゃダメなんだって、ずっとわかってた。


俺はアイツが言った通り、隼人さんと同じことをしている。


そんなことを、どうして今まで目を背け続けてきたんだろう。


あの人と違う方法で、愛してやりたかったのに…。



苦しめて、苦しめて…


“バイバイ”なんて、言わせたくなかった…。



『悔しくねぇのかよ?!』


「…悔しいよ…。
…悔しいに…決まってるだろ…。」


唇を噛み締め、吐き出すように声を上げた。


「…苦しめ続けたことも、俺の手で幸せにしてやれなかったことも…。
悔しくねぇわけねぇだろ?!」


静かな部屋に、俺の怒声が響く。


ただ胸が締め付けられて、アイツの笑顔を思い出す。



「…俺じゃ…ダメなんだよ…!」



俺じゃもぉ…アイツの笑顔は取り戻せない…。

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