粉雪2-sleeping beauty-
向かうのは、千里のマンション。


嫌でもあの日を思い出す。


あの日お前は、俺の目の前で死のうとしていた。


だけど俺は、生きていて欲しかった。


“後追いなんて、馬鹿げてる”って…。


俺はもぉ、お前なしじゃ生きられなくて…。


生きていてくれることだけを願い続けたのに…。


頼むから、早まった真似すんじゃねぇぞ!!



空から舞い降りてくる雪は、隼人さんみたいだった。


まるであの人が迎えに来たみたいで…。


怖くて怖くて、仕方がなかった。




―ガチャ…

「―――ッ!」


震える手で、千里の家のドアを開けた。


真っ暗な室内で、風呂場からの電気だけが漏れる。


まるでその場所に呼ばれるように、生唾を飲み、足を進めた。



「千里―――!」


俺の足元に転がっているのは、嘘みたいな顔で笑ってる隼人さんの遺影の写真。


落とした目線を、ゆっくりとその先に向ける。


足が見えて、その周りは真っ赤に染まっていた。


海で見たペディキュアの赤よりも、ずっと気持ち悪い色で。



「…千里…?」


声が震えて、足が進まない。


息さえも出来ないほど、錆びた鉄の匂いが支配する。



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