粉雪2-sleeping beauty-
真鍋は、ルミの肩を支えるようにして部屋を出た。


その後ろを、何かを押し殺したような顔をした嵐が続く。



ベッドで顔を覆ったままの千里と、隣のベッドに腰掛けたまま動けない俺。


重苦しいほどの沈黙が支配し、掛ける言葉すらも見つからなかった。




「…何で…こんなことするんだよ…。」


顔なんて見れなかった。


責めるような言葉だって、言いたくなかったのに。


「…やっと俺だって…“もぉ会わない”って決めたのに…。
こんなことされたら…お前の前に現れちまう…。」


『―――ッ!』



いつの間に俺達は、こんなに遠くなってしまったんだろう。


すぐ傍に居るはずなのに、立ち上がることも出来ない。



「…あの女は、何でもないから…。
俺には、お前が―――」


『言わないで!!』


「―――ッ!」


俺の言葉を遮るように、千里は声を上げた。


指の隙間から見えた大きな瞳からは、涙が溢れていた。


俺を睨むような瞳に、堪らなくなり目を逸らす。



『…そんなこと、聞きたくない…。
マツが引き止めるから…悪いんだよ…!』


「―――ッ!」



何が悪いとか、誰が悪いとか…


何も分からなかった。



『…なのに…マツの所為に出来ないの…!
あたしがこんなんだから…。
隼人に嫌われたんだ…。』


「―――ッ!」



千里は一度だって、誰かの所為にしたことなんてなかった。


ずっとずっと自分を責め続けて…。


苦しみ続けてきたんだ…。



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