粉雪2-sleeping beauty-
「…心配すんなって。
毎日来てやるから。
煙草だって、ケーキだって買ってきてやるぞ?」


『そんなのいらない!!』


耳を塞ぎながら、千里は声を上げた。


唇を噛み締め、俺の瞳を捕らえる。


『行かせる訳…ないじゃん!!』



あぁ、俺は…


こんなにも不安にさせていたのか…



「…あの人とは違う形で、お前を愛してやるよ…。
あの人とは違う方法で、お前を幸せにしてやる…。」


『―――ッ!』


「…俺今、ヤバいことしてねぇだろ?
お前が不安になるようなことなんて、何もないから…。」


『…そんなの…やだよ…。』


千里は掴んだ手を離さないまま、懇願するような瞳を向けてきた。


『…じゃあ…何するの…?』


「…お前がすっげぇハッピーになるための準備だよ…。
見てろよ、俺のこと…。」


『―――ッ!』


唇を噛み締めた千里は、何かを振り切るように、ゆっくりと俺を掴む手を離した。



「…不安なら、約束するから…。」


『―――ッ!』


「もぉ絶対、こんなことするなよ?
綺麗になって、俺の迎えを待ってれば良いから。
そしたら、お前を幸せにしてやる…!」


笑い掛ける俺に、千里は何も言わなかった。




なぁ、千里…


俺の決断で、お前は今、幸せだろうか…?


愛してたから…


あの時お前が温もりをくれたから、俺は大丈夫だよ…。


お前のおかげで今、俺は忙しくしてるんだ…。


あの約束、楽しみにしてるから―――…




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