粉雪2-sleeping beauty-
振り返る千里との日々は、楽しいことばかりじゃなかった。


だけどそのどれも、鮮明に思い出す。


アイツを愛して、アイツに見守られて。


傷つけて、傷つけて…。


俺がこれからすることで、少しは償うことが出来るだろうか。


愛してるから…


だけど、隼人さんとは違う形で愛してやりたいから。


胸が締め付けられて、苦しくて仕方がない。


怖くて怖くて、震える拳を握り締めた。





煙草を吸いに入り口まで行ったついでに、コンビニに寄った。


お菓子とジュースとセブンスターを買い、病院に戻る。




―ガチャ…

コンビニの袋をさげてドアを開けると、

丸椅子に腰掛けたルミは、振り返って声を上げた。



『マツさん!
ママの入院、6日だって。
13日の朝、退院することになったから。』


「…そう…か…。」



命日の日まで、丸一日ある。


そして与えられた猶予の短さを振り払うように、千里に顔を向けて笑った。



『千里~?
お菓子とか買ってきてやったぞ?
看護師には内緒にしとけよ?(笑)』


うそ臭いほどの笑顔を作っている俺はまるで滑稽で、

憔悴しきった顔の千里はまた目を伏せた。


だけど俺は、話しかけ続けた。


千里の瞳は、俺さえも映し出していない。


夢も希望もなく、ただ繰り返す毎日を生かされていたのだろう。


俺の所為で…


俺の為に、千里は苦しみ続けて来たんだ…。


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