粉雪2-sleeping beauty-
―――事務所には、妙な緊張感が支配していた。


腰掛けるソファーでも落ち着けず、つけては消しての煙草が増えていく。



『おはようございます。
つーか、どうしたんすか?突然。
しかも、こんな時間に。』


真鍋は寒そうに手を擦り合わせながら、背を丸めて足早に事務所の中に入ってきた。



「…まぁ、座れよ。
ルミと嵐も、そのうち来ると思うから。」


もぉ一体何本目だかわからない煙草の煙を吐き出しながら、

向かいのソファーに視線を移した。


言われた通り腰を下ろしながら、真鍋は不思議そうに首をかしげる。



『…つーか今日一応、うちの嫁の予定日なんすよ。』


「…そっか…。」


緊張を打ち破ろうとしたのか真鍋は、話題を探す。


だけど俺は、生返事しか出来ない。


打ち付ける心臓の音は早く、嫌に喉ばかりが乾く。




『マツ、おっは♪
つーか、事務所こんなトコにあったんだ。
お前、儲かってんだな(笑)』


現れたのは、ヘラヘラと笑う嵐と、緊張した顔のルミだった。


きっとルミは、呼び出された理由が良い話ではないと気付いているのかもしれない。



「…悪ぃな、忙しいのにこんなトコまで呼び出して。
まぁ、座れよ。」


真鍋の横に腰を下ろすルミと、

“仕事終わったから”と言いながら俺の横にドカッと腰を下ろす嵐を確認し、

短くなった煙草を消した。


最後に吐き出した煙は勢い良く筋状に伸び、汚い天井へと消える。



『…で?
俺ら呼び出して、どうしたんすか?』


戸惑いがちに、真鍋が切り出した。



「…お前らにちょっと、話しておきたいことがあるから。」


そんな真鍋の瞳を見据え、俺は口を開く。


相変わらずルミは顔を俯かせ、嵐はジッポでカシャンカシャンと遊んでいた。


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