粉雪2-sleeping beauty-
「…聞きたいか?俺達の真実…。」


『―――ッ!』


目を見開いた3人の顔は、滑稽だとすら思った。


俺は立ち上がり、使っていない机に向かって足を進めた。



『…前に話してくれたことは…?
あれが、真実なんじゃないの?』


背中から、ルミが戸惑いがちに聞いてきた。


机の真ん中の引き出しから一冊の週刊誌を取り出しながら、顔だけそちらに向ける。



「…あれも真実だけど、本当はそんな簡単なことじゃねぇんだ。」



“詐欺師の正体と、貢がれ続けた女”


開いたページには、デカデカと胸くそ悪い文字が並ぶ。



「…この事件、2年前にテレビで騒がれてたろ?」


『―――ッ!』


囲む机の上に投げるように置いた週刊誌を覗き込み、3人は言葉を失った。



『…これって…!』


「…千里が愛した男と、その男の本当の姿だ。
つっても、そこに書いてあるのは全然違うけどさ。」


先ほどまで座っていた場所に、再び腰を下ろした。



「…極道だった俺を拾ったのは、そこに“詐欺師”とか書かれてる小林隼人なんだよ。
闇金にシャブ、偽造カードに盗難車の売買。
まぁ、そんなことやってたんだわ。」


『―――ッ!』


「…その男が愛した女が、そこに“貢がれ続けた女”とか書かれてる千里なんだよ。
まぁ実際は、世間から見りゃそうなるのかもしれねぇけど…。」


言いながら、煙草を咥えた。


大きく吸い込む煙は、肺イッパイに広がる。


支配するメンソールを吐き出し、少しだけ目を細めて体をソファーに預けた。


状況が理解できてないのか3人の瞳は、困惑するように揺れている。



『…いや、ちょっと待てよ!!
確かこれって、愛人とその“貢がれ続けた女”との三角関係のもつれとかじゃねぇのかよ?!』


戸惑いがちに、嵐は俺に向き直った。



『そうっすよ!
結局愛人作ってんだから―――』


その言葉に、遮るようにハッと笑った。

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