粉雪2-sleeping beauty-
『…“河本”って…お店に来たあの男だよね…?』


戸惑いがちに、ルミは聞いてきた。


俺は頷きながら、言葉を続ける。



「…ポン中が捕まって、俺らもヤバくなったんだ。
ポリの野郎共が、マークし始めた。
全然関係なかった千里も、任意で引っ張られて…。」


『…“関係ない”って…!』


「関係なかったんだよ、アイツは。
隼人さんは、千里の前では、仕事の話すらしなかった。
“巻き込みたくねぇから”とか言ってたけど、だったらせめて、手放してやれば良かったんだよ。」


ハッと笑い、メンソールの煙を吸い込んだ。


吐き出した煙を見つめ、手元の灰皿に押し当てる。



「…ポリがマークしだして、今度は隼人さんが狙われたんだ。
隼人さんはその黒幕を探りながら、千里の存在を隠す為に他に女を作った。
俺は今まで通りにヤバい仕事続けて、金稼いでたんだ。
絶対に、誰にも悟られないように。
全て、千里の為だったんだよ…。」


『―――ッ!』


「…その結果、掴んだのは黒幕が河本だったってことだ。
だから、飛ぶ以外になかった。
その為に、安西香澄が利用されたんだ。」


何も言わず、真鍋は煙草に火をつけた。


嵐も同じように煙草を咥え、俺の話を黙って聞き続ける。



「…獅龍会の情報を警察に売れば、俺達は助かる筈だった。
安西香澄はホステスで、客には大勢の獅龍会の人間が居たんだ。
だから、ターゲットになった。」


そこまで言い、一度深呼吸をした。


そして再び顔を上げ、言葉を続ける。


「…だけどあの女は、千里と知らねぇ仲じゃなかったんだよ。
それは分かってたけど、あの女以外に居なかったんだ…。
隼人さんは、千里には何も言わなかった。
ずっと、隠し続けたんだ。」


『―――ッ!』


「…だけど千里は、本当はそのこともわかってたんだ。
聞かれた俺は、何も答えられなかった。」


思い出すだけで悔しくて、唇を噛み締めた。


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