粉雪2-sleeping beauty-
virgin road
―――千里の病院に行き、先に会計だけ済ませた。
生と死の混在する場所な筈なのに、人々の笑顔は、嫌に明るい。
まるで生きることを望んでいるようで。
千里とは、正反対だと思った。
真っ白な病院に黒のスーツで歩く俺はきっと、
弾き出されたように浮いているのだろう。
病室までの長い廊下を歩きながら、心臓の音は次第に大きさを増す。
止まってしまいそうになる足を、一歩ずつ進めた。
「おはよう。
気分は?」
『…マツ…。』
開いていたドアから中に入り、すでに着替えていた千里に声をかけた。
戸惑いながら千里は、俺の名前を呼ぶ。
開いていた窓から冬の冷たい風が吹き抜け、千里の髪をなびかせた。
『…今ね、服とか詰めてたの。
マツは…もぉ終わったの…?』
視線を一度バッグに向け、そして再び俺の顔を見上げた。
ゆっくりと千里の傍まで歩み寄り、少しだけ笑い掛けた。
「…全部、終わった。
だから、お前を迎えに来たんだ。」
『…そっか…。』
包帯の取れた左手首を擦りながら、千里は顔を俯かせた。
チラッと見えた隙間からは、痛々しい傷がハッキリと残されたままだ。
「…痛い?」
『…そんなこと…ないよ…。』
少し気まずそうに言いながら、顔を上げた千里の瞳が俺を捕らえる。
『…マツ、どうしたの?
目が赤いね…。』
「―――ッ!」
俺の頬に触れながら、千里は悲しそうに聞いてきた。
だけど俺は振り払うように、サングラスを取り出した。
「…寝不足なだけだよ。
気にすんな。」
言いながら、千里の荷物を持った。
部屋を出る俺の後ろに、千里は何も言わずに続く。
生と死の混在する場所な筈なのに、人々の笑顔は、嫌に明るい。
まるで生きることを望んでいるようで。
千里とは、正反対だと思った。
真っ白な病院に黒のスーツで歩く俺はきっと、
弾き出されたように浮いているのだろう。
病室までの長い廊下を歩きながら、心臓の音は次第に大きさを増す。
止まってしまいそうになる足を、一歩ずつ進めた。
「おはよう。
気分は?」
『…マツ…。』
開いていたドアから中に入り、すでに着替えていた千里に声をかけた。
戸惑いながら千里は、俺の名前を呼ぶ。
開いていた窓から冬の冷たい風が吹き抜け、千里の髪をなびかせた。
『…今ね、服とか詰めてたの。
マツは…もぉ終わったの…?』
視線を一度バッグに向け、そして再び俺の顔を見上げた。
ゆっくりと千里の傍まで歩み寄り、少しだけ笑い掛けた。
「…全部、終わった。
だから、お前を迎えに来たんだ。」
『…そっか…。』
包帯の取れた左手首を擦りながら、千里は顔を俯かせた。
チラッと見えた隙間からは、痛々しい傷がハッキリと残されたままだ。
「…痛い?」
『…そんなこと…ないよ…。』
少し気まずそうに言いながら、顔を上げた千里の瞳が俺を捕らえる。
『…マツ、どうしたの?
目が赤いね…。』
「―――ッ!」
俺の頬に触れながら、千里は悲しそうに聞いてきた。
だけど俺は振り払うように、サングラスを取り出した。
「…寝不足なだけだよ。
気にすんな。」
言いながら、千里の荷物を持った。
部屋を出る俺の後ろに、千里は何も言わずに続く。