粉雪2-sleeping beauty-
―――自分の家なのに、何故か懐かしく感じた。


シャワーや着替え以外には、この5日間、ほとんど帰ってこなかった。


暖房をつけ、煙草を咥えてソファーに座った。


少し緊張した顔で、千里も隣に座る。


何から話せば良いのかすらわからず、

心臓の音が早くなるのと反比例して、煙草は短くなるばかりだ。



『…マツ?』


「―――ッ!」


名前を呼ばれ、ハッとした。


顔を向けると、覚悟をしたような千里の顔があった。


一つ大きな深呼吸をして、ゆっくりと俺は口を開く。


緊張して、声が震えて。


だけど振り払うように、千里の瞳を見据えた。



「…お前、隼人さんのところに行けよ。」


『―――ッ!』


目を見開いた千里に、言葉を続ける。



「…俺の手で、殺してやる。」


『―――ッ!』


千里の困惑する瞳が揺れていた。


息を飲む音さえ聞こえるほど、包み込んでいる静寂が重い。



『…ちょっと待ってよ、マツ…!
何言ってんの…?』


一口煙草を吸い、ゆっくりと吐き出した。


俺から出た煙は、モヤモヤと部屋を漂い消える。



「…これが俺の愛し方だ。
ずっと、お前がどうすれば笑っててくれるかだけ考えてきた。
愛してるから、殺してやる。」


『―――ッ!』



心臓の音が早くて、胸が苦しくて。


本当は、手放したくなんてないんだよ。


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