粉雪2-sleeping beauty-
「…何で今更、そんな話するんだ?
らしくねぇじゃん…。」



千里は今まで、人の秘密なんて絶対に言わなかったのに。



『…わかんないけど多分、懺悔がしたいの。』


「…懺悔?」


『…あたし、みんなの話聞くことしか出来なかった。
いっつも助けてもらってたのに、あたしは何も出来なかった…。』


唇を噛み締めた千里は、搾り出すように言った。



「…そんなこと、誰も思ってねぇよ。
みんな、お前のことが好きだって言ってたぞ?」


『―――ッ!』


握り返した手は、少しだけ震えていた。


俯く千里は今、どんな顔をしているだろう。



「…不安とか全部、この世に…俺んとこに置いていけ。
墓場には、笑顔だけ持って行きゃ良いんだよ。」


『―――ッ!』


「…全部、俺が受け止めてやるから…。」



二度目にしたキスは、涙の味でしょっぱかった。


助手席で涙を零す千里を見るのは多分、一年前の命日の次の日以来だろう。


あの時俺は、何も言えなかった。


だけど今は、そうじゃないから。


千里の涙の意味だって、あの時とは違う。



『…マツが居てくれて良かった…。
マツの為に生きてきて、良かったよ?』


「―――ッ!」


涙を拭ってやる俺を、千里の瞳が捕らえる。


脆くて儚くて、そして綺麗で。


吸い込まれそうだった。


いや多分、ずっと前から吸い込まれていたのだろう。


出会ったあの日から、俺は吸い込まれたままになっているんだ。


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