粉雪2-sleeping beauty-
「…なぁ、千里…。
もぉ止めねぇ?」


『…え?』


瞬間、千里は顔を強張らせた。


だけど俺は、言葉を続ける。



「…結局お前今、誰の女なんだよ?」


『―――ッ!』


「…何で俺が、最後の最後であの人の金で飲み食いしなきゃいけねぇの?
つーか俺、お前に金出させたことなんて一回もないだろ?」


煙を吐き出しながら、千里の元に歩み寄った。



「…指輪外したのだって結局、向こうに持っていけないからってだけ?
そんなんなら、もぉ止めよう。」


『―――ッ!』


千里は悲しそうに顔を上げながら、俺を捕らえた。


だけど俺は、吸い込まれてしまわないようにしっかり見据える。



『…ごめん…。
でもあたし、ホントにそんなつもりじゃないよ?』


「…もぉ良いよ。
その代わり、買い物付き合え。」


それだけ言い、きびすを返して車に足を進めた。


投げ捨てた煙草は地面に転がり、だけど俺は見ることもなく車に乗り込む。


泣きそうな顔を伏せながら、千里も同じように助手席のドアを開けた。



ため息をつき、そんな千里に顔を近づけた。


触れた唇から舌を入れ、絡めるようにして千里を感じる。



『―――ンッ…!』


千里の声が漏れ聞こえ、ゆっくりと唇を離した。



「…こんなんで声出すなよ…。
そんな色っぽい顔してたら、今ココでヤるぞ?」


『…違っ…!』


顔を真っ赤にさせた千里は、驚いたように声を上げた。


少し上気した顔にフッと笑い、シフトをドライブに入れて車を発進させた。


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