粉雪2-sleeping beauty-
『…こんなんで許してくれるの…?』


口を尖らせた千里は、上目遣いで俺を見上げる。


だけど俺は、その言葉に大きなため息をついた。



“こんなん”って…。


俺は“こんなん”をするために、どれだけ我慢してたと思ってんだよ…。


つーかこの女は、その辺が全然分かってねぇ。



「…仕方ねぇから許してやるよ。」


『ホントに?』


「…しつこい。」


不審そうに俺を見る顔に、またため息をついた。


だけど何故か、千里の顔は笑顔に戻る。



『マツ、大好き~♪』


「…あっそ。」



全くこの女は、全然意味がわからない。


つーかやっぱ、俺の方が振り回されてる気がする…。



『…マツって、いっつもそうだよね。』


「…何が?」


煙草を咥えた千里は、俺に向けてクスッと笑った。



『…怒ったと思ったら優しくして。』


「―――ッ!」


一瞬驚きながらも、諦めた俺は煙草を咥えた。



「…好きだからムカつくし、好きだから傷つけたと思ったら優しくするんだよ。
全部、お前だからなんだよ。」


『―――ッ!』


キョトンとした千里は、次の瞬間にはまた笑顔になった。


笑いを堪えながら、肘置きに置いていた俺の手を握る。



『…嬉しいよ?』


「―――ッ!」



結局俺は、千里に振り回されっ放しだ。


ムカつくくらい大きな瞳で見上げられると、何でか許してしまう。


そんな自分が情けなくて、ため息ばかりが出てしまう。



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