粉雪2-sleeping beauty-
―――連れてきた場所は、ショッピングモール。


目的地に向かって歩く俺を、千里は不思議そうな顔をして見つめた。



『…どこ行くの?
てゆーか、何買うの?』


「…行けば分かるよ。」


さっきからそればっかりの俺に、千里はいい加減諦めてため息をつく。



『…マツは隠し事多いよね。』


「お前にだけは言われたくねぇよ。」


イーッとした顔を向けてきた千里に、嫌でも口元が引き攣ってしまう。


だけど繋いだ手を離さないように、しっかり握り締めた。




「ハイ、ストップ。」


店の前で足を止め、声を上げた。


そんな俺を見て目をパチクリとさせる千里の顔は、酷く滑稽だと思った。



『…え?てゆーか、何で??
ジュエリーショップ…だよ?』


だけどその問い掛けには答えず、俺は店の中に足を進めた。


戸惑った顔をしている千里は、引っ張られるようにして店に入った。



「…好きなの選べ。」


『いや、ちょっと待ってよ!!』


制止するように声を上げる千里に、だけど俺は言葉を続けた。



「…待つのダルイし。
決められねぇなら、俺が勝手に決めるぞ?」


『そーゆーこと言ってるんじゃないじゃん!!』


言い争いをしている俺達を、店員が不思議そうに横目で見る。


その店員を睨み付け、声を上げた。



「オイ!
適当にコイツの好きそうなの何個か持って来い。」


『えぇ?!』


『…あっ、ハイ…。』


勝手に話を進める俺に驚き声を上げた千里と、逃げるように店の奥に消えた店員。


千里の顔は、俺の考えがまるで分かっていないようだった。


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