粉雪2-sleeping beauty-
「…お前今、俺の女だろ?
忘れられたら困るから。」


『―――ッ!』


戸惑う千里に、俺は言葉を続けた。



「…左手寂しいだろ?」


俺の言葉に、やっと千里は少しだけ笑った。


勝ち誇った顔の俺に、指輪を見つめながら顔を上げる。



『…右手は?』


「繋いでるから良いんだよ。」


吐き出す煙は、冬晴れの空に消えた。


少し肌寒い、だけど気持ちの良い風が吹き抜ける。



『…お揃いじゃないんだね。』


「俺のなんかいらねぇんだよ。」


『…何で?』


「何でも。」



その理由なんて、言いたくなかった。


俺の指輪なんて、なくて良いんだ。


間違って引き止めるようなことになってしまえば、また千里が傷つくから。



『…お金持ちだね。』


「使い道に困ってたんだよ。」


フッと笑う俺を、千里は見つめながら困ったように笑っていた。



『…ありがとね、マツ…。』


「…どーいたしまして。」



金なんてあったって、どーせこの先お前の為に使うことはないんだ。


だったら最後に使い切れば良い。


この先使うはずだった分も、今まで使えなかった分も。


後悔だけはしたくなかったから。


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