粉雪2-sleeping beauty-
『コレ、可愛いね♪』


左手に光る指輪は、陽の光を浴びて輝いていた。


それを見つめる千里の横顔は、可愛くて仕方がなかった。



「…気に入ったんだ?」


『うん♪』


喜んだ顔を確認し、煙草を灰皿に押し当てて立ち上がる。


そんな俺を、目を細めた千里が見上げた。



「じゃあ、次ね。」


『…今度は何買うの?』


「行けばわかる。」


そんな俺に、“またそれ?”と言いながら、千里も煙草を消して立ち上がった。


千里の風になびく髪からは、スカルプチャーの香りはしなかった。


ほのかに香るシャンプーの香りは、

きっと今までの俺達と違うことを表しているのだろう。


たったそれだけのことで、何故か俺の足取りは軽くなった。




エスカレーターに乗って向かうのは、服屋が並ぶフロア。


再び俺にキョトンとした顔を向け、千里は言葉を発した。



『…服なんか買って、どーすんの?』


だけど俺は、千里がいつも行く店に足を進める。


返ってこなかった返事に口を尖らせながら、千里は俺の後ろに続いた。



『いらっしゃいませ♪』


ギャルっぽい店員を無視し、店の奥に足を進めた。


そして気に入った服を数着持ち上げ、千里に渡す。



『…何?』


「試着。」


短く言った俺に、千里は諦めたようにため息をついた。


そして渡された服を持ち、試着室のカーテンを閉める。



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