粉雪2-sleeping beauty-
そのまま服とコートを買い、店を出た。


隣で手を繋いで歩いている千里はすっげぇ綺麗で、

他のヤツラに見せるのが勿体無くなる。



『…何かマツ、嬉しそうだね。』


「良い女が隣に居るからな。」


俺の言葉に、千里ははにかんだように笑う。


そして顔を上げ、いつものように困った顔で笑うんだ。



『…馬鹿だね、マツは…。』


「ハッ!俺のこと好きなくせに。」


『…うん、すっごい好きだよ?』



だけどそれは、“愛してる”じゃないことくらい、俺にだってわかってるから。


いつの間に俺は、

“兄弟みたいな関係で良い”ってのじゃ、満足出来なくなったんだろう。


俺は生きて、こんなにも愛してるのに。


死んだ人間に敵わないんだから、嫌になる。



『…次、どこ行くの?』


「…わかんねぇ。
とりあえず車戻る?」


『…うん。』



なぁ、千里…


お前はあの時、何を考えてた?


俺と隼人さん、どっちのことを考えてた?


本当は、1秒でも早くあの人のところに行きたかったんじゃないのか?


なのに、俺の隣で笑っててくれてありがとう。


俺達の手は確かに繋がっていたのに、心はきっと、別の方を向いていたんだろうな。


だけどそんな風に考え出すと悲しくなるからさ。


本当は、悔しくて悔しくて堪んなかった。


だけど俺も、これ以上は泣かせたくなかったのに…。


最期の時まで、本当にありがとう。


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