粉雪2-sleeping beauty-
やっと俺の隣に腰を下ろした千里を確認し、デッキの電源を入れた。


膝を抱え、ブランケットを掛けて俺の肩にもたれ掛かるようにして座る千里の肩を抱く。



『…マツはあったかいね。』


ポツリと呟く千里は、俺を見上げた。



「…生きてるから。」


『…そっか。
そーだよね…。』


悲しそうに呟く千里に、胸にチクリと何かが刺さる感覚を覚えた。


だけどDVDは、お構いナシに明るい音楽を流す。



『…何でアルマゲドンなの?』


「俺が好きだから。」


『…初耳だね。
そんなの知らなかったよ。』


「…だって今まで、お前が勝手に好きなの借りてきてたじゃん。」


少しだけむくれた千里にキスをした。


ねじ込んだ舌に、千里の生暖かい舌が絡まる。


抱いた肩を引き寄せ、抱き締めるようにして味わった。



「…俺だって、泣きたい気分なんだよ。」


『―――ッ!』


一度目を伏せた千里は、再び俺を捕らえた。


そしてゆっくりと、言葉を掛ける。



『…泣かないでよ…。
泣かれたら、行けなくなっちゃう…。』


「―――ッ!」



流れているはずの静かで穏やかな時間に、だけど切なくて苦しくなった。


こんなにも愛してるのに、何故手放さなきゃならないんだろう。


出来ることなら、一生俺に縛り付けておきたい。


だけどそれじゃ、千里は笑ってくれないってわかってるから…。


何で俺達って、上手くいかないんだろうな…。


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