粉雪2-sleeping beauty-
「…寒くない?」


『全然大丈夫だよ!』


テンション高く言う千里に、ため息をついた。


煙草を投げ捨て、言葉を掛ける。



「…“寒い”とか言えば、抱き締めてやったのに。」


『―――ッ!』


瞬間、千里は驚いたように俺の瞳を捕らえた。


そして諦めたように、言葉を紡ぐ。


「…あたし、急に寒くなったんだけど。」


『…しょーがねぇなぁ…。』


言いながら、千里を後ろから抱き締めた。


毛皮のコートは肌触りが良く、頬の辺りを千里の髪がくすぐる。


何度抱き締めても千里は細くて、だけど少しだけ温かかった。


腰にまわした腕を千里の手が捕らえ、包み込むように握られた。


それだけのことだけで、愛しさばかりが込み上げる。



『…大好きだよ、マツ…。』


「…うん、知ってる。」



俺が今震えているのは、寒さの所為だからなのだろうか。


それとも、泣いているからなのだろうか。


抱き締めた腕に力を込め、唇を噛み締めた。



「…行くなよ…。
もぉ良いじゃん…。
このまま、俺のになっとけよ…。」


『―――ッ!』



ホントは言いたくなかったのに…。


だけど、抑え切れなかった。


千里の肩に顔をうずめ、締め付けられる胸の苦しみに耐えた。


ただ、千里の顔を見ることが怖かったんだ。



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