粉雪2-sleeping beauty-
呆然と立ち尽くしている俺を残し、風呂場のドアがバタンと閉まった。
無意識に見た時計は、夜の9時を指し示していた。
タイムリミットまで、残り3時間―――…
漏れ聞こえてくるシャワーの音を振り払うように、
ソファーに腰を下ろして煙草を咥えた。
真っ白な天井に、俺から吐き出された煙が漂う。
心臓が音を立て、支配する不安に喜べるはずもなかった。
あれほど望んでいたことなのに。
俺は、千里を抱くことが出来るんだろうか。
抱いてしまったら、あの人のところに連れて行くことが出来るんだろうか。
昔一度だけ、写真を見た。
隼人さんに愛されてる、アイツの姿。
直視なんて出来なかった。
あの残像を、振り払うことが出来るんだろうか。
――ガチャ…
「―――ッ!」
どれくらいの間、意識を漂わせていただろう。
気付いたら、風呂場のドアがゆっくりと開いた。
『…気持ち良かったよ?
マツもシャワー浴びれば?』
「…あぁ。」
髪の毛を拭きながら、千里はパジャマ姿で現れた。
化粧を落としたくせに、意識しすぎだからなのか心臓が音を立てる。
出来たのか出来てないのかの生返事を残し、入れ違うように風呂場に足を進めた。
千里の顔を見ることなんて、出来るわけがなかった。
『…ありがとね、マツ…。
パジャマ、捨てられてるのかと思った。』
「―――ッ!」
千里は俺の後ろ姿に向かい、声を掛けた。
ゆっくりと振り返り、少しだけ口元を緩ませる。
「…捨てられるわけねぇよ…。
この部屋は、ずっと前から何も変わってねぇから…。」
それだけ言い、風呂場のドアを閉めた。
無意識に見た時計は、夜の9時を指し示していた。
タイムリミットまで、残り3時間―――…
漏れ聞こえてくるシャワーの音を振り払うように、
ソファーに腰を下ろして煙草を咥えた。
真っ白な天井に、俺から吐き出された煙が漂う。
心臓が音を立て、支配する不安に喜べるはずもなかった。
あれほど望んでいたことなのに。
俺は、千里を抱くことが出来るんだろうか。
抱いてしまったら、あの人のところに連れて行くことが出来るんだろうか。
昔一度だけ、写真を見た。
隼人さんに愛されてる、アイツの姿。
直視なんて出来なかった。
あの残像を、振り払うことが出来るんだろうか。
――ガチャ…
「―――ッ!」
どれくらいの間、意識を漂わせていただろう。
気付いたら、風呂場のドアがゆっくりと開いた。
『…気持ち良かったよ?
マツもシャワー浴びれば?』
「…あぁ。」
髪の毛を拭きながら、千里はパジャマ姿で現れた。
化粧を落としたくせに、意識しすぎだからなのか心臓が音を立てる。
出来たのか出来てないのかの生返事を残し、入れ違うように風呂場に足を進めた。
千里の顔を見ることなんて、出来るわけがなかった。
『…ありがとね、マツ…。
パジャマ、捨てられてるのかと思った。』
「―――ッ!」
千里は俺の後ろ姿に向かい、声を掛けた。
ゆっくりと振り返り、少しだけ口元を緩ませる。
「…捨てられるわけねぇよ…。
この部屋は、ずっと前から何も変わってねぇから…。」
それだけ言い、風呂場のドアを閉めた。