粉雪2-sleeping beauty-
煙草を消し、同じように煙草を消した千里を確認し、テレビの電源を切った。


不思議そうに俺を見る千里に笑いかけ、何も言わずに手を引っ張った。


かき上げる髪の毛は、まだ少し冷たい。


だけど、打ち付ける心臓の音ばかりを気にしてしまう。


ベッドに寝転がる俺と同じように千里も寝転がり、

俺の腕の中で二人して天井を見上げた。



『…マツと一緒に寝るのって、初めてじゃない?』


まるで修学旅行のように、千里は小声で言いながら笑顔を向けた。



「…つーか、寝るなよ。」


静かな部屋に、俺達の声だけが響く。


息遣いさえも聞こえそうなほど静まり返り、腕の中の千里の体温を感じる。


変に緊張して、まるで俺は、中学生みたいで。



『…何か話してあげようか?』


「―――ッ!」


まさか、千里から言い出すなんて思ってもみなかった。


上目遣いの大きな瞳が、キラキラと輝く。




「…何話してくれんの?」


『…マツを初めて見たとき、チンピラなのかと思った。』


「…何だ、それ…。
つーか、酷い言われようだな。」


体を起こし、横の机に置いていた煙草を咥えた。



『…マツのことなんて、気にもしてなかったよ。
けど、この街に来て、マツの事大好きになった。
この街での思い出は、全部マツと一緒に作り上げてきたものだから。』


「―――ッ!」



だったらもっと、楽しいことしてやれば良かった。


もっと色々、連れてってやれば良かった。


嬉しいはずなのに、少しだけ悔しくなった。


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