粉雪2-sleeping beauty-
「…お前は、俺にとって家族みたいなもんだった。」


『…家族?』


キョトンとした千里が聞き返す。



「…居ることが当たり前だと思ってた。
だから、お前を傷つけることしか出来なかった。」


『…そんなことないよ。』


だけど千里は、首を横に振ってくれた。


ただそれだけのことが、俺を安心させる。



「…今まで、決して楽しいことだけじゃなかったよ。
でも、お前と一緒に居た時間が、今まで生きてきた中で一番ハッピーだった。」


『…うん。』


「…忘れさせてやることが出来なくてごめんな。
でも、お前を愛して良かったよ。」


『―――ッ!』


煙草を消し、横になっている千里の上に乗った。


キスを落とす俺を、千里が受け入れる。


ただ愛しくて堪らなかった。



「…お前が誰のものだって、俺は愛してるから。」


『―――ッ!』



苦しくて、切なくて、少しだけ悲しかった。



「…嘘でも良いから言ってくれ…。
俺のこと、愛してるって…言えよ…。」



ただ怖くて…。


だけど、お前は言ってくれたんだ。



『…マツ、愛してるよ…。
マツだけを、愛してる…。』


「―――ッ!」



そんなのすぐに、嘘だってわかるのに…。


お前の優しさが、ただ嬉しかった。


込み上げる愛しさは止められなくて―――…


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