粉雪2-sleeping beauty-
sleeping beauty
“…なぁ、マツ…。
欲しい物を手に入れたら、今度は手放したくなくなったんだ…。
…どーすりゃいいかな?”



…俺は、あの人とは違うから…。


自らを抜き、最期に千里に笑い掛ける。



「…お前は、最高に綺麗で、そして最高に良い女だったよ…。」


そしてゆっくりと、その細い首筋に手を掛ける。


余韻に浸ったりしたら、ダメなんだよ。


そしたら俺、絶対お前を手放せなくなるから。



『…ごめんね、マツ…。
愛してたよ…。
…約束…絶対だからね…。』


その言葉を残し、千里はゆっくりと目を瞑った。


それを合図にするように、俺は両手に力を込める。


次第に千里の顔が苦痛に歪み始め、俺の手首に爪を立てる。



あとちょっとだから…


あとちょっと我慢すれば、お前は絶対幸せになれるから。


あとちょっと…。



こんな苦しそうな顔なんて、見たくなかった。


だけど、独りでは行かせない。



その瞬間、千里の口が微かに動く。




“あ り が と―――…”




そして力が抜けるように、千里の腕が滑り落ちた。


“ありがとう”という言葉を残し、千里は死んだ。


隼人さんのところに、子供のところに行ったんだ。






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