粉雪2-sleeping beauty-
『…実は、マツにプレゼントがあるんだよ♪』


車に乗り込むなり、千里は笑顔を向けてきた。



「ハァ?プレゼント?」


驚きと嬉しさで、思わず口元が緩んでしまって。



『そうだよ~!絶対似合うと思ったんだ!』


そう言って、バッグから箱を取り出した。


真っ黒の大きめの箱には、ドルガバの刻印が入っている。



大きな瞳で上目使いで手渡してくる箱を、不思議な顔をして受け取った。



「…キリストロザリオ…?」


箱を開けると、チェーンの長いネックレスが入っている。


チェーンにはオーバル型のプレートが付いており、

その中にキリストをモチーフとしたデザインが施されていた。



『マツはいっつも黒のスーツだから、シルバーが映えるよ。』


「…さんきゅ…。」


そんな言葉しか言えなかった。


サングラスでニヤつきそうな顔は、隠せているのだろうか。


そんなことばかりを気にしてしまう。



そんな俺を見た千里は少し笑い、煙草を咥えた。




このキリストロザリオは、お前が俺にくれた唯一の形あるプレゼントだったな。


俺は別に、お前から色々な物をもらった気がするから、何も望んでなかったんだ。


だけど嬉しかったんだよ、この時は。


お前がどんな想いを込めたのかも気付かずに、ただ喜んでた。


お前はこれをくれた時、どんな気持ちだった?


そんなことばかり、考えてしまうんだ…。


だから俺、今忙しくしてるからな…?


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