粉雪2-sleeping beauty-
どれほどお前との思い出に浸っていただろう。


見つめた窓の外には、いつの間にか粉雪が舞っていた。



「…嘘…だろ…?」



そんなはずねぇよ…。


だってさっきまで、確かに夜空には星が輝いてたんだ。


嘘みたいに、晴れ渡ってたんだ…。



あぁ、そうか…。


あの人が、迎えに来たんだな…。


負けたよ、完璧に…。


いや、最初から勝てるなんて思ってもなかった。



だけどお前は、これで幸せになれるんだ。


絡まりすぎた俺達の糸が、ようやくあるべき姿に戻ったんだ。



ゆっくりと煙草を咥えて立ち上がり、リビングに足を進めた。


先ほどと、何ら変わりはない。


気配を探せばまだそこに、千里が居るようで…。


机まで行き、その場で足を止めた。


千里の残して行ったアクセサリーの中から指輪を持ち下げる。


そして寝室に戻り、千里の指についた俺の指輪を外した。


ゆっくりと、その指に隼人さんの指輪を嵌める。



最初から、こうするつもりだった。


お前には、この輝きが一番良く似合ってるんだ。


ペアなんかにしちゃダメだったんだ。


今日だけ、俺のになってくれてありがとう…。



「…お前、結局ドレス買った意味ねぇじゃん…。」


笑いかけると、千里も同じように笑っている気がする。



「…なぁ、千里…。
思い出話でもしてやろうか…?
…何が聞きたい…?」


眠っている彼女の頭を優しく撫でた。


答えなんて、返ってこない―――…







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