粉雪2-sleeping beauty-
『…マツ、買い物でも行こうよ…。』


「…あぁ。」



俺もさぁ、正直限界だったんだよ。


1年間、毎日毎日お前の心配ばっかして。


やっと命日を過ぎたら、今度はお前が意味のわからないこと言い出すし。


お前に振り回されてる気さえしてな?


自分で選んだ筈なのに、苦しくて堪らなかったんだよ。






「…何買うんだ?」


『わかんないけど、何か買いたい気分♪』


一緒に街を歩くと、人並みが避けるように道を作る。


それが当たり前の様に、俺は歩く。



「…お前、そっち危ないから!」


ため息をつき、車道側を歩く千里の肩を引き寄せた。



―ビクッ!

『―――ッ!』


その瞬間、千里の肩が小さく跳ねる。


そして、戸惑うように大きな瞳が揺れていた。



「…悪ぃ…。」


『…ごめん…』



…何でお前が謝るんだろうな…。


謝られたら、俺が悪いことでもしてる気分になる…。



立ち尽くしている俺達を避けるように、人の波がビルに吸い込まれていた。


なのに俺達の間に流れる空気だけ、止まってしまったみたいだ。


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