粉雪2-sleeping beauty-
―ピーンポーン…

深呼吸をしてチャイムを鳴らしたのに、反応すらない。



―ピーンポーン、ピーンポーン…


「…無視かよ…!」


段々イラついてくる。



「―――千里!
てめぇ、居るのは分かってんだぞ?!
出て来いや!!」


ドアの前で怒鳴った。


俺はまるで、借金取りみたいだ。




―ガチャ…

『…マツ…?』


ゆっくりと扉が開き、千里は恐る恐る顔を覗かせた。



「入るぞ!」


『…え?ちょっと待ってよ!!』


勝手に押し入る俺に、千里は戸惑いの表情を向けた。



相変わらず南国みたいな部屋のわりに、あんまり生活感がない。


まるで、ラブホテルみたいだ。



夕方だと言うのに、部屋は真っ暗。


海が望めるベランダのカーテンだけが開いていた。




「…お前、俺との約束忘れてねぇよなぁ?」


煙草を咥え、千里を睨んだ。



『…どの…約束…?』


千里の目が泳ぐ。


これは多分、わかってる筈だ。


< 46 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop