粉雪2-sleeping beauty-
『…今日はね、付き合った記念日なんだ。
あれから、4年になるんだよね…。』


「…そっか…。」



こんな話を聞いていると、息苦しくて仕方がない。


本当に、このまま窒息してしまいそうだ。



焼けて行く肉を、ただ見つめることしか出来ない。


口を開けば、優しい言葉を掛けてしまいそうになる。


我慢しようと思えば、傷つけるようなことしか言えなくなる。


抱き締めて、“もぉ忘れろよ”って言ってやりたくなるんだよ。



『…隼人はもぉ、忘れちゃったのかな…。』


「―――ッ!」


千里は自嘲気味に笑っていた。



「…食おうぜ…」


『…うん…。』


なのにいつまで経っても箸をつけない千里のお皿に、肉を入れ続けた。



赤黒く変色した肉は、醜い俺と一緒だ。


こんな話をしている時ですら、お前の体を想像してしまう…。




「…忙しいんだよ、あの人も。
そのうちヒョッコリ、プレゼント持ってお前の夢に現れるよ。」



…何でこんな話してんだよ…。


だけど、これ以外にお前を安心させる言葉を知らないんだ…。



「…金稼ぐのもさ、大変なんだよ。
だって、堅気になったばっかだぞ?」


『…そうだね。』


俺の並べる言葉に、千里はやっと少しだけ笑ってくれた。



「…お前を迎えに来る準備してんだよ。」


『そっか。』


「…そーだよ。」



馬鹿だろ、俺って。


結局、こんなこと言ってんだもんな。


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