粉雪2-sleeping beauty-
結局、千里はビールを頼んだ。


思い出に浸って、酒で誤魔化して。


連れ出したのに、結局前と何も変わっていない。



俺の努力は、いつかは報われるんだろうか…?


隼人さんは、千里を苦しめる為に身代わりになったのか…?


違うだろ…?


幸せになって欲しいから、身代わりになったんだろ…?




『…優しいよね、マツは…。』


アルコールで少しだけ赤くなった頬で、千里はいつもと同じように優しく笑った。



「…優しくねぇよ…。
お前が本当の俺なんか知ったら、ドン引きすんぞ?」


『あははっ!
マツなら、怖くないよ。』


俺の向かいで、千里は安心しきった顔で笑っていた。



「ハッ!言ってろよ、馬鹿が。」


煙草を咥え、挑発するように言ってやった。



本当にお前は、俺のことを怖がらずに受け止めたもんな。


俺の方が、怖かったんだぞ…?


…大丈夫だよ。


まだちゃんと、お前のこと覚えてるから。




『お肉冷めちゃうよ!
食べよう♪』



これでやっと、いつもの千里に戻った。



記念日だか何だか知らねぇけど、俺には関係ない。


俺の中では、全部“過去”なんだよ。


そんな風に思わないと、やってられねぇよ。


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