粉雪2-sleeping beauty-
『…ま~た年取っちゃった…。
すぐに、追い越しちゃいそう…。』


ポツリと呟きながら、千里は金平糖の瓶を見つめた。


聞こえていたのに、俺には何も言えなかった。



「…お前、人気者だな…。
もぉ、あの人だけのお前じゃねぇもんな…。」


煙草を咥え、皮肉を込めた。



『…そんなことないよ…。』


目を伏せる千里に、やっぱり何も言えなかった。



『―――ママ!
おめでとう!!』


『ありがとー!!
清原さんも来てくれたの??』


すぐに客に呼ばれ、いつもの笑顔に戻った。



お前はすぐに、顔が変えれるんだもんな。


もぉ、染み付いちゃってるみたいにさ。


そーゆーの知ってるから、結構ツラかったんだ。




『…嫉妬しちゃってますか?』


笑いを堪えた真鍋が聞いてきた。



「…そんなんじゃねぇよ…。」


ため息と共に煙を吐き出した。



『…だったら何で、“おめでとう”の一つでも言わないんすか?』


「…だってアイツ、ホントは喜んでないんだぜ?
自分の誕生日…。」


煙草を灰皿に押し当て、自嘲気味に笑った。



『…それも、俺に“秘密”ですか…。』


諦めたように、真鍋も煙草を咥えた。


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