粉雪2-sleeping beauty-
だからって別に、芸能人に憧れるのと一緒ってゆーか?


お前を“自分のものにしたい”なんて、これっぽっちも思ってなかったんだ。


まぁ、“隼人さんの女だから”ってのもあったのかもしれねぇけど。




だからこそ、あの旅行だって楽しんで欲しかったんだ。


だけど皮肉な話だよな。


あの時撮った写真が遺影になって、今の俺とお前を苦しめたんだ。


でも、誰だってあんな終わり方になるなんて、思ってもみなかったろ?



よくお前は、あの旅行のことを話してたよな…。


そして決まって最後は、“気付いてあげられなかった”って言って泣くんだよ。



気付いてあげられなかったのは、俺の方だよ。


お前の苦しみも、隼人さんの苦しみも、何も気付いてやれなかった。




「…でも、意外っすね。
隼人さんは今まで、飲み屋の女以外は相手にしなかったのに…。」



俺の言った何気ない一言は、どれほどお前を苦しめただろう。


気付かなかっただけなんだよ。


隼人さんに愛されてるお前が、影で苦しんでるなんて。


お前は、幸せなんだと思い込んでた。




思えばあれが、お前が一番綺麗だった頃なんだろうな。


今でも十分綺麗だけど、やっぱりあの頃は幸せなオーラが出てたよ。



こんなことになるってわかってたら、面白い話でもしてお前を笑わせてれば良かった。


あの時のお前なら、少しは心から笑ってくれたかな…?



でもどーせお前は、俺なんかの話、聞かなかったろうけど。


お前の頭の中には、あの頃も、そして今も隼人さんしか住んでないんだよな。



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