粉雪2-sleeping beauty-
―カランッ…

『マツさんと、真鍋さんじゃん!
いらっしゃい♪』


店の扉を開けると、ルミが出迎えてくれた。



「…お前、太った?」


相変わらず首に掛けているだけのフェンディーのマフラーを外しながら聞いた。



『ひっど~い!!
マツさん、何でそんなこと言うの?!』


「…冗談だろ?」


顔を真っ赤にして怒るルミをからかうのは楽しい。


そんな俺達を見た真鍋も、お腹を抱えて笑う。



『…マツ、女の子にそんなこと言っちゃダメでしょ?』


カウンターで勝手に一杯やっている千里が眉をひそめる。



『そうだよ、ママ!
もっと言ってやってよ!!』


そんでもってルミが、千里に泣きつく。



まぁこんなカンジで、楽しく平和だった。


本当にいつも通りで、何の変哲もない日だったんだ。




「…何で今日、客いないんだ?」


『平日だしね。
お店閉めて、みんなで飲む?』


辺りを見回す俺に、千里はグラスを上げて聞いた。



『じゃあルミ、外の電気消してくるね♪』


「うん、お願い♪」


ルミの顔がパッと明るくなり、同じように千里も笑った。




―カランッ…

『あっ、ごめんなさい!
これからお店閉めようと思ってたんですよ…。』


誰かが入ってきたのか、後ろからルミの困ったような声が聞かれ、

ゆっくりと振り返った。



「―――ッ!」


その瞬間、言葉を失った。


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