粉雪2-sleeping beauty-
「…何でアンタが…ココに居るんだよ…!」


自分でも分かるほどに、顔が引き攣る。


そして恐る恐る千里を横目に見ると、同じように目を見開いて固まっていた。


生唾を飲み込み、視線を男へと戻した。



『…随分探したぜ…?』


店中に男の低い声が響き、緊張が包み込んだ。


その風貌は、一年前に最後に会った時と何ら変わっていなかった。


相変わらずゴールドのアクセサリーを好み、薄ら笑いさえ浮かべている。



『…あのっ、えっと…。
お知り合い…ですか…?』


ただならぬ雰囲気に、ルミは戸惑いがちに俺達の顔を見比べた。



「何でココに居るんだって聞いてんだよ!!」


唇を噛み締めて、声を荒げた。



『ハッ!誰かと思えば、松本じゃねぇか!
ちょっと見ねぇ間に、随分デカい口きくようになったなぁ。』


「―――ッ!」



目を逸らせば、負ける。


拳を握り締め、睨み付けた。



『…良いよ、マツ…。』


ゆっくりと立ち上がった千里は、俺達の間に入った。


そして男に向き直り、言葉を続けた。



『…お久しぶりですね、河本さん…。
こんな場末のスナックに、何の用ですか?』


『…そんなに睨むなよ…。
酒飲みに来ただけだろ?』



その姿はまるで、対等にさえ見える。


口は渇き、頭は上手く働かない。


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