粉雪2-sleeping beauty-
安西香澄と隼人さんに何があったのかは、今でも話す気にはなれないんだ。


お前が聞いたって、どーせまた泣くだろ?


泣かせたくないから、教えてやらねぇよ。




『…アイツには、何も言うな…!』



いつも隼人さんは、苦しそうに言ってた。


いっつもお前のことばっか考えてたんだ。



“言えないなら、せめて隠そう”


俺も同じだった。



だけど、結果的に俺も隼人さんも、お前を余計に苦しめることになったんだよな。




『…相手は、“安西香澄”でしょ?』



正直、心臓が飛び出るかと思った。


“隠すんじゃなかったのかよ?!”って。


“何で気付いてるんだよ?!”って。




「そこまでされてるのに、何で愛し続けられるんだ?!」



だから、聞いてみた。


お前は、悲しそうだったな…。




「…俺と…、逃げる…?」



結構、本気で言ったんだぜ?


そんなお前、見てられなかった…。


あんな隼人さんだって、見てられなかったんだ…。



この二人が別れれば、少なくとも傷は小さくて済むと思ってた。


だけど、俺なんかが言う前に、お前らだって気付いてたんだよな。



別れられたら、とっくに別れてただろう。


それほど愛し合ってるって気付いたのは、

皮肉にも隼人さんがアンパン喰ってた頃だった。



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