粉雪2-sleeping beauty-
「―――てめぇ、いい加減にしろや!
それ以上言うと、殺すぞ!」


河本の胸ぐらに掴みかかった。



『ハッ!やれるモンならやってみろ!
今度は外人なんか使わずに、てめぇの手でな!』


「―――ッ!」


動じることなく吐き捨てた河本に、唇を噛み締めた。



『やめて!』


千里が無理やり俺と河本を引き離した。



『マツ、喧嘩がしたいなら、外でやって!』


そして河本に向き直り、言葉を続けた。



『…河本さん…。
アンタも堅気と喧嘩して、不利なのはどっちか考えてくださいね?』


『ハッ!“堅気”だぁ?』


河本が眉をしかめる。


そんな河本を睨み付け、千里は言葉を続けた。



『そうだよ。
あたし達は、アンタとは違って、昔から堅気だよ!』


『…それ、胸張って言えるのか?
小林はともかく、松本は少なくとも違うだろ~?』


「―――ッ!」


河本は最後の煙を吐き出し、近くのテーブルにあった灰皿に押し当てた。


千里はゆっくりと、その姿を目で追う。



『…なぁ、松本よぉ…。
今更てめぇが真っ当な陽のあたる場所歩けるのか?
そんなんじゃ、背中の虎が泣いてるぜ?』


「―――ッ!」


胸がザワついて、体中の血液が逆流しているようにさえ感じる。


背筋に嫌な汗が流れ、酷く口が渇く。


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