粉雪2-sleeping beauty-
その瞬間、肩の力が抜けたようにソファーに崩れ落ちた。


そして咥え煙草のまま、天井に向かって煙を吐き出した。



『…マツ、大丈夫…?』


顔色を伺うように、千里が声を掛けて来た。



…何でお前、俺の心配してんだよ…。



「…お前の方が、よっぽど大丈夫じゃねぇツラしてんぞ?」


『…あたしは…、大丈夫…。』


まるで、自分に言い聞かせているようにさえ感じる。



『あのっ、社長…!
俺…―――』


今まで黙っていた真鍋が、戸惑いがちに口を開いた。


それを遮るように、千里は取り繕う。



『違うんだよ、ナベくん!!
昔がどうであろうと、マツはマツでしょ?!』


「…良いよ、千里…。」


煙草を口から外し、灰皿に押し当てた。



「…真鍋、聞いた通りだ。
俺は背中に虎飼ってるし、それは紛れもねぇ事実なんだよ。
俺について来れねぇと思うなら、今すぐ辞めちまえ。」


『―――ッ!』


瞬間、真鍋の顔が強張った。



『マツ!
何言ってんの?!』


千里は悲しそうな顔を向けて、俺を怒鳴りつけた。


そして、真鍋に向き直る。



『…ねぇ、ナベくん…。
誰にでも過去なんてあるよね?
ナベくんの前でのマツに、偽りなんてないよ?
だから、これからもマツのこと、支えてあげてよ…。』


いつもの優しい口調で、少しだけ悲しそうに言葉を掛けた。


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