粉雪2-sleeping beauty-
『…スンマセン、俺…。
今、すげぇ混乱してます…。』


真鍋は顔を隠すように手をかざし、俺から少し離れた位置に腰を下ろした。



『…ごめん、ママ…。
ルミも…。』


同じようにルミも腰を下ろし、戸惑いの表情を浮かべていた。



「…悪ぃな、千里…。
お前は、俺と隼人さんに巻き込まれただけなのにな…。」


立ち上がり、カウンターに向かって足を進めた。


そして、飲みかけだった千里のグラスの酒を流し込んだ。


渇いていた喉に、苦味が広がる。



『…マツ…。
あたしが選んだ人生だよ?
…誰の所為でもない…。
全部、あたし自身が決めたことだから…。』


千里は悲しそうに、顔を俯かせた。


少しだけ、千里の肩が震えているように見える。



お前はずっと、そうやって生きてきたもんな。


全部自分が抱え込んで、自分を責め続けるんだ。




『もぉいい加減、話してくださいよ!!』


真鍋が声を荒げた。



「…俺には、千里の傷エグるような真似、出来ねぇよ…。」


『―――ッ!』


今度はハッキリとわかるほど、千里の肩は震えていた。


なのに俺は、抱き締めることすら出来ない。



「…全部河本が言った通りだよ…。」


それだけ言った。


俺は何を失ったって、構わないんだ。


だけど、千里を傷つけたくはなかった。


< 75 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop