粉雪2-sleeping beauty-
「…お前、キッチンで何やってたんだよ?」


話を変えるように、煙草でキッチンの方を指した。



『あぁ、ご飯炊いてたんだよ。』


同じように煙草を咥え、千里は相変わらず笑顔を向けた。



「…てゆーか、そんなことしなくて良いから、寝ろよ。」


『ハァ?ご飯作ってやるんだから、文句言わないでよ!』


「…泊めてやるんだから、言うこと聞けよ。」


最後の煙を吐き出しながら、灰皿に押し当てた。



『何よ、マツの馬鹿!』


口を尖らせる千里に、ため息をついた。


まだ少し湿った髪の毛が、体の熱を奪う。



『…マツなんか…嫌い…。』


「―――ッ!」



…何でお前が、悲しそうな顔するんだよ…。


頭が痛くなりそうだ…。



「―――だったら俺に頼るなよ!
都合の良い時だけ、利用するような真似すんなよ!」


『―――ッ!』


声を荒げた俺に、千里の肩が小さく撥ねた。



「…悪ぃ。つーか、ごめん…。」


『―――ッ!』



千里はもぉ、この時には限界が近かったんだ。


何も気付けなかったけど、傷つけたことだけはわかった。


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