粉雪2-sleeping beauty-
「…お前も疲れてんだし、風呂入って来いよ!
な?飯なんて、良いからさ!」


顔を俯かせる千里に、焦って取り繕った。



『…ごめん、マツ…。』


泣きそうなほど、か細い声だった。



「…てゆーか、俺も言いすぎたから…。
別に、そんなことホントは思ってねぇからな?」


千里の短くなった煙草を取り上げ、灰皿に押し当てた。



“思ってない”なんてのは、嘘だ。


だけど、俺は千里を傷つけないって決めてるから…。


傷つくのは、俺だけで良いんだよ。


こんな顔をさせる為に、この部屋に招き入れたわけじゃない。


少しでも傷を癒してやる為に、俺が居るんだ。



「ホラ、行けっつーの!
別に、今更お前の風呂なんか、覗こうなんて思ってねぇよ!」


笑顔を向け、その小さい背中を押した。



『…ありがとね、マツ…。』


やっと少しだけ笑った千里は、荷物を持って脱衣所に向かった。


その姿を見送りながら、その場にしゃがみ込んで、ため息をついた。



“何であんなこと言っちゃったんだろう”とか、

“やっぱ馬鹿だよな、俺”とか。


今更、後悔や罪悪感ばかりが襲ってくる。


少しして、風呂場からシャワーの音が漏れ聞こえ、また緊張が走った。



…つーか俺、何考えてんだよ…。


床を殴り、拳に走る痛みに顔を歪めた。




こんな時なのに、変なこと考えちゃってる俺は、どーかしてるだろ?


お前はあの時、どんな気持ちだった…?


やっぱり隼人さんのことばっか、考えてたのかなぁ?


少しは、俺のこと考えてくれてた…?


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