粉雪2-sleeping beauty-
それだけ言った俺は、冷蔵庫に向かって足を進めた。


返事なんて、聞きたくなかった。


取り出したミネラルウォーターを流し込み、その場にしゃがみ込んだ。



『…ありがとね、マツ…。』


後ろから声を掛けられ振り返ると、少しだけ笑った千里が脱衣所の扉を閉めた。


少しして、ドライヤーの音が聞こえてくる。



相変わらず俺の頭の中には、“何やってんだよ”ってことばっかで。


だけど少しだけ安心して、思い出したように笑った。




俺達はずっと、支えあって生きてるんだと思ってたんだ。


この時も、変わらずそんな風に思ってた。



“何で、出会わせたのかなぁ?”


お前、確かにそう言ったよな?


俺も、ホントにそうだと思うよ。



俺が隼人さんと出会った事…


隼人さんが千里と出会った事…


千里が俺と出会った事…


絡み合った運命の糸はこの時には、グチャグチャになって行ってて…。


俺はただ、元に戻したかっただけなんだ。


もぉ戻らないことくらい、わかってた。


だからただ、せめてほつれた部分を真っ直ぐに正したかっただけなんだ。



お前には、幸せになって欲しかった。


俺じゃなくても、良かったんだよ。


そんなこと、最初から望んでなかった。


ただ、お前との生活が長くなっていって、

ちょっとだけ期待してしまっただけなんだ。


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