粉雪2-sleeping beauty-
『…あんなこと聞かされて、その上説明もないんですよ?』



…ガキがよ、コイツ…。


聞いたら、納得して仕事するのかよ…。



「…もぉ良いよ。
付き合いきれねぇわ。」


ため息をついて吐き捨てた。


「…せいぜい、嫁と生まれてくる子供、路頭に迷わさねぇようにな。」


『待ってください!!』


終話ボタンに手を掛けた瞬間、電話口から大声で制止された。



『…何で社長は、何も話してくれないんですか?』


「…じゃあ聞くけど、何でお前は全てを聞きたがるんだ?
誰だって、触れられたくない話の一つや二つ、あるもんだろ?」


煙草を咥え、少しだけ自分を落ち着かせた。



「…とりあえずお前、事務所に来い。
辞めるにしても続けるにしても、電話じゃ話せねぇだろ?」


『…ハイ。』


真鍋の返事を聞き、ゆっくりと電話を切って煙を吐き出した。



部屋中を、自分で作った重苦しい空気が包む。


漂う煙は、俺の心の中みたいにモヤモヤとしていた。


開かれたままのスポーツ新聞の芸能欄には、

大女優の結婚の写真がデカデカと載っていた。


婚約指輪を顔の前で光らせて幸せそうに笑うその顔は、酷く滑稽に思えて仕方がない。



指輪で人の心が繋げるなら、俺は千里の薬指から隼人さんの指輪を奪うのに。


そして、俺がめちゃくちゃ高いやつでもはめてやるのに。


だけどそんなことをしても、千里の心から隼人さんが消えることはない。


虚しいばかりの想像が、頭の中を支配し続けた。



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