粉雪2-sleeping beauty-
「…どっちでも良いけど、千里には何も言うな。
下手な同情の言葉なんか言っても、アイツは傷つくだけだ。
余計にお前らに気ぃ使って話すことになる…。」


『…わかってるよ。
ルミ、ママのこと好きだから…。』


何かを吹っ切ったように、ルミは笑顔を向けてきた。


その言葉に、少しだけ安心した。



『…真鍋さんも男でしょ?
何イジケてんの?』


真鍋の背中を叩き、ルミは喝を入れた。



『…昨日もママが言ってたでしょ?
誰にだって過去はあるんだよ。
それを根掘り葉掘り、聞くもんじゃなかったんだよ。』


『―――ッ!』


『マツさんは、ちゃんと本当のこと言ってくれたじゃん!
一番傷ついてるのは、ママやマツさんでしょ?』



飲み屋で働く者は、多かれ少なかれ傷を負った者達だ。


聞かないだけで、本当は何かしらの理由があって夜の世界に身を置いている。


ルミもまた、何かを抱えているのだろう。



『…スンマセン、社長…。
俺が馬鹿でした!』


そして、その場に頭を下げた。


『これからも、社長に着いて行きます!
てゆーか、着いて行かせてください!!』


「…都合が良いやつだよ、お前は…。」


ため息をつき、そんな真鍋の姿に笑いが込み上げてきた。



『…ダメっすか…?』


顔だけ上げた真鍋は、戸惑いがちに聞いてくる。



「…勝手にしろよ。
その代わり、今度仕事マクった時には、容赦しねぇからな?」


口の端に煙草を咥え、少しだけ口角を上げた。


気付けばもぉ、昼の時間帯だった。


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