腐っても、恋。
全然息抜きにならねェ、

と思ったが最早コイツには通用しなさそうだ。

「おい、俺は帰る」

「あ~、姫チャンどこ行ったんだろ」

ほらな、全然聞いてねェ。
ある意味取り付く島もない。

なんで俺が!!

ぶっちゃけ頭ン中はそればっかだった。

正直、この店に出入りする所を知り合いに見られるのは困る。


(俺のキャラが…)


目の前で鼻歌を歌いながらニコニコしている友人を見て、頭を抱えた。


…二度目だが、この甘ったるい空気が、嫌になる。店内に響く、声。


「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ~っ」


テーブルのすぐ横を、ゴスロリ調のスカートが通り抜ける。






…そう、いわゆるメイド喫茶というやつだ。
お帰りなさいませって…いやマジで帰りたいんだ。

俺の家に。


「お前が奢るなんて珍しい事言うと思ったら…」

「失礼な。いいじゃん、ここ安いし。可愛いし。キュンとこない?」

「こない。帰る。」

「メイドさんは好みじゃなかったんか~??じゃあ…」


全くどうしようもない。メイドさんがダメなら…などと見当はずれな事を呟いてやがる。

そういう問題じゃねぇ!


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