開かない扉
じゃがいもと流れ星
私、七橋千代。

友達からは年寄り臭い名前ってよく言われます。

それでも、去年の今頃は東京の大手証券会社で働いてそこそこのお給料をいただいていた身分だったの。

東京暮らしにも慣れて、そろそろ彼氏でも見つけようかな?って時だったわ。

帰宅途中に歩道に乗用車が突っ込んできて、私ははね飛ばされてしまったの。

命は助かったものの、右足に後遺症が残ってしまい、早く歩いたり、走ったりができなくなってしまった。

車椅子で過ごさなくてはならない悲劇のヒロインでもないところが、私らしいというか、地味でついてないなとしか言いようがない。

その上、お母さんが病気のおばあちゃんの看病疲れで倒れちゃって、田舎へ帰ってきたというわけ。
私までお母さんの重荷になるわけにはいかないので、リハビリしながら家業の農家の手伝いをしているの。



今日は近所の農家のみんなが手伝ってくれて、じゃがいもがいっぱいとれたわ。

じゃがいも1つ1つがなんだかかわいい~~~~(o^-^o)

こんな気持ちになったのは久しぶり。

ものに愛着がもてたり、土があったかい。

仕事して、高い評価がもらえるわけじゃないけど、仕事したぁって気持ちはこっちの方があるような・・・。

でも、以前の私はそうは思わなかったのよね。


そんな、後悔と反省が頭の中をぐるぐるまわって、いつのまにか目をあけると夜になっていて、目の前は降ってくるようなくらいたくさんの星が輝いていた。



「あ、寝ちゃったんだ。」


体を起こそうとしたときだった。


「まだ、起きちゃだめだ!頭を強く打っている。そのまま動かないで。」


「えぇ!?」



なんで?私はただ、畑で寝転がっていただけなのに・・・。

それにこの人は誰なの?

急に知らない人に怒鳴られて、しっかり目が覚めるかと思いきや私の意識は遠のいてしまったのだった。


そして、再び目を覚ましたときには、私は驚くべき現実を受け入れねばならなかった。





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