開かない扉
「おい、話は診療所へもどってからにしようや。
ここにいたら、まだ何か出てきたら困るだろ。」
エルロが声をかけたときにはオーヴィアの姿はどこにもなく、気配すら消えていた。
帰り道、リリルはナオの腕にしがみつくように自分の腕をからめて歩いていた。
ゼオは不機嫌になり、つぶやいた。
「まぁ!何なの、あの女。先生の知り合い?馴れ馴れしすぎるわよねぇーー!
つっ!!! あっ。そうなの。」
「どうしたの?ゼオさん。大丈夫?」
「大丈夫よ。先生が・・・」
「先生がどうしたの?」
「うん。何でもない。・・・大丈夫。ほんと大丈夫よ。」
((先生、苦しいんですね。好きな女性じゃないんですね。))
千代はゼオの様子にも不思議そうな顔でエルロにたずねてみた。
「あのきれいな人、エルロの知り合い?先生をよく知ってるみたい。
元の世界で恋人だったとか?」
「俺もあっちの世界でのことはまだ詳しくきいてないけどさぁ。リリルは隣町1番のブティックのオーナーでさ、すごいお金持ちであり、気が強く、水魔法とか電気魔法とかを得意としてるらしい。
ちっちゃいときから、水商売の家庭で育ったらしくてさ、あっちの世界では兄貴がホストクラブのオーナーだったらしくて、先生はその兄貴がやってた店の売れっ子だったとか。」
「え゛ーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「先生がホスト!?いやぁ~~ん。なんか違うわぁ~~」
「信じられない。リリルさんはなるほどって思うけど、ナオ先生はとてもそんな感じには見えない・・・見えな・・・見えなくもないか。
あの深い色の瞳で見つめられちゃうと・・・あはっ、私も考えられない。」
診療所に着くと、リリルはさびれた建物と内装を魔法でピカピカにしてしまった。
「ちょっとゴージャスさに欠けるけど、私が存在するにはこのくらい美しくなければね。」
「ほぉ~きれいにしてくれてありがとう。感謝するよ。」
「う~~~んと・・・ナオもきれいにしなきゃね。」
「いや、僕はべつに、これで気に入ってるしさ・・・」
「だめよ。さ、脱いで。」
「ええっ!!」