開かない扉
「ナオ先生!千代が・・・千代がなんかおかしい。」

「えっ?千代ちゃんがどうした? 今どこにいる?」


「それが・・・確保用の・・・」

「なっ!!」

ナオは大慌てで部屋を飛び出していった。

「ナオ!」


ナオのたどり着いた場所。それは精神病患者用の鉄格子の部屋。
つまり、牢屋にベッドだけを置いた部屋だった。


「千代ちゃん、どうしたの?えっ!!!」


ゼアがナオの行く手を阻むように、ナオを鉄格子の中へ入らないように制する。

「ゼア!どうして・・・」



「あのこ。見た目は千代ちゃんだけど、千代ちゃんじゃないのよ。」


「えっ、でも、ここから見てる分には千代ちゃん・・・あっ」


千代の体が青白く光り始めた。

そして、千代はお祈りをささげるように、手を組みナオの方へ振り向いた。

千代の黒いはずの瞳が青く透き通るような瞳になり、肌の色もわからないほど、全体が白っぽく変化していった。


「この娘はわたくしの代弁者です。わたくしはこの世界を造ってしまった愚かな神といっておきましょう。

しかし、この世界を造ってしまったことにはわけがあるのです。
あなた方、この世界に来てしまった人々はここへ来なければ皆とっくに消え去っていた人たちなのです。」


「消え去る。死んでいたってことですか?」

ナオは恐る恐る、質問した。


「生きることも死ぬこともできずに消え去っていた。存在がなくなるということです。
地上のどの世界においても、あなたは存在しない存在。
星もない宇宙空間のように・・・。

今、この世界では神官と名乗って、生き物を化け物にして時間と空間のゆがみを発生させようとする者が存在しています。

化け物には、わたくしが直接手を出すことができない呪文が組み込まれていて、動きを止めることはもちろんのこと、退治することもできません。

そこで、わたくしは、あなた方が消え去ることを止め、ゆがみを発生させてすべてを闇と無の世界にしようとする悪しき者を封じてもらうことを思いついたのです。」
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