開かない扉
「まぁ、信じられないだろうけど、そこを何とか最後まできいてくれる?」


ナオが続きを話し始める。

「理由はわからないけど、神様は千代ちゃんを代弁者に選んだ。そして、僕に話しかけてきた。

この世界はもちろん、元の世界も含めて、神様が創造した世界というのはたくさんあって、それぞれが時間と空間のバランスをとって存在していた。

ところが、時間と空間をゆがめて、いろんな世界のバランスを壊す存在が現れた。

あのおかしな神官と化け物だ。」


「えっ、でもあの神官さんって神様に仕えているんじゃ・・・それなのに、私の体にいた神様って・・・いったいどういうことなの?」


「詳しいことはわからないけど、リリルがあの神官は複数存在していると教えてくれた。
彼女の情報網は確かだ。
これは僕の推測なんだけど、神様の世界も一枚岩ではないのか、神と名乗る別の脅威がこの世界を滅ぼして、空間をゆがめようとしてるのかもしれない。」


ナオが説明したところで、リリルが口を差し挟んだ。

「ねえ、千代にとりついた神様って、どうしてナオにだけそんなことを話しかけたのかしらね。」


「ほんとだ・・・なんで先生だけ眠ってなかったんだ?」

エルロも納得がいかなさそうに問う。


「僕が皆をまとめる役だからだとか言ってたよ。そのための力は渡してあるだろって。」


「あっ、回復魔法とか、医学の知識とか?」


「そうみたいだ。僕は元の世界では医学部なんて縁がないくらい、学校の成績はよくなかったからね。」


「あん、それも私が証明してあげるわ。ナオが得意なのは、お客の女性を口説くことぐらいだったのよ。
それが、まさか・・・お医者様だなんてねぇ。」


「リリル!!」


ナオがちらっと、千代の方を見ると、千代が目をそらしてうつむいたのがわかった。
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