開かない扉
「1度だけって・・・いつもあの子を守ってあげてたじゃない。」
「あ、言い方が悪かったね。救世主に命の危険が及んでしまったとき・・・普通に守ることができなかった場合、僕が生贄となって、千代ちゃんは死ななくて済む。
それだけじゃない。同時に僕は救世主の力となる。
千代ちゃんがこの世界を救いたいと願えば、僕は千代ちゃんとこの世界を救えるというわけだ。たぶん・・・ね。」
「じゃあ、今すぐにここで、生贄になってみて!」
「えぇ!?そ、それは・・・」
ゼアは意地悪そうな笑みを浮かべながらいった。
「大切なことを隠してるでしょ。生贄の話はわかったけど、それと千代ちゃんをそんなに必死になって捜す理由とが結びつかないんだけど。」
「・・・っ」
ナオはゼアに小さな声で言った。
「今のままじゃ、僕は千代ちゃんの贄としても存在できないんだ。
救世主と正式な契約をしていなければ、完全に守ってあげることはできないし、贄の役目を果たさず、突然消滅するかもしれない。
だから、早く捜し出して、契約しないと・・・」
「そんなのわかっててどうして早く契約しておかないのよ。仕事終わってからでも時間くらいあったでしょ?」
「それが・・・その・・・なにだ・・・だから・・・えと・・・」
ゼアは赤い顔をしながら、言いにくそうにしているナオの様子から、察してしまった。
「救世主との契約ってHなんでしょ?世の中うまくいかないものね。
リリルさんかあたしなら簡単に契約成立だったでしょうに・・・」
「おぃ、そんな簡単に言わないでくれ。契約は救世主が贄を受け入れることに意味があるんだ。抱かれるのは僕の方・・・。そんなの想像もつかないだろ?」
「先生が襲っちゃえば、すぐに求めてくるわよ。」
「だから・・・くーーーーーーっ!こんな話してる場合じゃないんだ。
さっき書庫で連れ去った男が贄ってこともあり得るんだ。
そうなったら・・・僕は・・・
何も役に立てないまま、消えてしまう。」
「でも千代ちゃんがいる場所の手がかりってあるの?」