開かない扉
ナオは千代の髪の毛を取り出して、説明する。
「この髪の毛が救世主のものだとしたら、僕が強くこの髪を通して贄でありたいと願えば、救世主は何らかの反応を示すはずだ。
千代ちゃんが僕に会いたいと思ってくれるのがいちばん早く見つける手なんだけどね。」
「はぁ・・・それでいきなり、旅?どうしちゃったんです?先生。
やみくもに捜しまわっても千代ちゃん頼みじゃどうしようもないでしょ。
ちょっと待ってね。」
ゼアは目をとじて、髪の毛を持ったナオの手をつかんだ。
そして、意識を集中させる。
((これは・・・))
「どこかわかったかい?」
「ごめんなさい。手強い相手にさらわれちゃったようね。
意識すら入り込めないほどの結界をはられちゃってるわ。
ほんとに、千代ちゃんからの発信待ちになりそうね。でも、発信がないってどういうこと?」
ナオは真っ青な顔をしている。
((まさか、あの続きって無理やり契約させられてしまったとか・・・いや、それなら、その前にSOSを発信するはず・・・結界の他に魔法で千代ちゃんのすべてが封じられているというのか。どうすればいいんだ!))
そんなナオを見かねたゼアはいったんナオに鎮静剤の注射をうち、ベッドで眠らせた。
そして、エルロや町の人々に千代の行方を捜してもらうことにした。
「原始的な方法だけど、人を捜すときは人の手に頼る方がいいわよね。」
「もちろん。だけどよぉ、千代をさらったってヤツは許せねぇよなぁ。
先生も千代がどこの馬の骨かわからないヤツにキッスされたまま連れ去られたなんて、かっこ悪すぎじゃね~か。
俺が見つけたら、絶対そいつギッタギタのボッコボコにしてやる。」
エルロはゼアから千代が正体不明の魔法使いにさらわれたと聞いて千代の行方を捜し始めた。
ナオとはまた違う感情を抱きながら。